「ねぇ見て。
桜めっちゃキレイだよ」
僕は、彼女の一言でふと我に返る。
隣を見ると、僕のことを心配そうに見つめる
彼女の顔が目に入った。
その顔には、不満や怒りといった感情はない。
ただ僕のことを心配してくれているその表情に
余計に僕の心は締めつけられた。
僕は今日、彼女と1泊2日で
京都旅行に来ている。
7:10品川駅発の新幹線に乗りこんだ僕たちは
9時すぎにはもう京都駅に降り立っていた。
今回の京都旅行では
キレイな桜を見よう
って話だけをしていて
特にどこに行くかは決めていなかった。
なので、行きの新幹線のなかでは
「ここの桜がキレイそうだ!」
「ここは行ってみたい!」
みたいな話をしながら
2人で京都でどこに行くか決めていた。
そして、新幹線で話しながら
2人が同時に
「ここ、めっちゃキレイ…!」
と魅了されたとあるスポットに
まず向かうことにした。
それなのに…
京都駅から、決めたスポットまでのあいだ
バスに乗っている時間が長かったこともあり
彼女は途中から隣で寝てしまった。
そうして1人になった僕は
結局、バスの車内で
ずっと仕事のことを考えていた。
しばらくして、目的としている
バス停に到着し2人でバスを降りたが
一度仕事のことを考え始めた僕の脳内は
なかなか現実世界に帰ってくることが
できていなかった。
そんな僕は
バス停から目的地まで歩きながらも
ずっと仕事のことを考えていて
隣で話している彼女の声も
ずっと上の空で聞いていた。
そんな僕の耳に届いた、彼女の一言。
「ねぇ見て。
桜めっちゃキレイだよ」
その声にも、彼女の表情にも
いっさい怒りの色はない。
きっと、それまでの僕の返事が
上の空だったことも
彼女は気づいていただろう。
でもそんな僕の態度に
彼女は何ひとつ文句も言わず
ただ僕のことを心配してくれていた。
かたや僕はと言えば
ずっと仕事のことばかり考えていて
彼女の話もロクに聞かず、彼女に言われるまで
目の前にあるキレイな桜にも
気づかなかった。
彼女は、バスから降りてここに来るまで
周りの景色がどんなものか
ずっと話していたんだろう。
「○○がキレイだね!」
「あ、○○ってお花がある!珍しい!」
上の空で聞いていた彼女の声を反芻すると
そんなことを言っていたことが
かすかに思い出せる。
それなのに、僕はその声を上の空で聞きながら
頭の中ではずっと仕事のことを考えてた。
せっかく京都まで来て、行きの新幹線のなかで
行きたいところを決め、そこに向かっているにもかかわらず
頭のなかは東京に戻ったきり帰ってこない。
身体は京都にあっても脳内は東京にいて
仕事をしていたのだ。
しかも、隣では無邪気に景色を楽しんでいる
彼女がいるにもかかわらず…
いや、彼女は僕が話を上の空でしか聞いてないことを悟り
無理に楽しい表情をしていたのかもしれない。
自分で行きたいと言った場所に
向かってるくせに心ここに在らずで
ロクに楽しめない僕。
その挙句、隣にいる彼女に
無理をさせている僕。
そんな自分の状況を理解したとき
ふと思った。
「僕は何のために
仕事を頑張ってるんだ?」
「こういう時間を大切にするために
仕事を頑張ってるんじゃないのか?」
今の状況を考えれば考えるほど。
彼女のただただ心配そうな表情を
思い返すほど。
そんなことを考えさせられた。
なぜ仕事をするのか。
なぜ金を稼ぐのか。
もちろん、金を稼いでタワマンに住み
美女と毎晩ヤる。
そういう目標を”悪い”と
言っているわけではない。
ただ、僕は
人は”誰かと楽しむ”から幸せになる
んじゃないかと思っている。
あなたがたった1人で
心を許せる友達・恋人・家族もいなければ
どれだけ金を稼ぎ、その金を使って
どれだけ酒を飲み美女を抱こうとも
心の底から幸せだ
とは言えないんじゃないか。
もちろん、そういう楽しみをすること
自体は良い。
僕もかわいい子は好きだし
お酒を飲むことも好きだから
そういう遊びを定期的にしたりはしている。
でも“それだけ”では幸せになれない。
本当の幸せって、大切な人と桜を見ながら
「キレイだね」って言い合える。
そんな何気ない時間を
大切にできるようにすることなんじゃないか。
そんな時間を大切にできるよう
仕事で金を稼ぎつつも
“いつも仕事に追われてる”
状況は変えなければいけないんじゃないか。
僕自身が、ふとそんなことを思いました。
あなたはどうでしょうか?
常に仕事のことばかり考えてしまって
大切な人との時間も疎かにする
僕のような最低な人間にはなっていませんか?
ぜひ、この記事をキッカケに
一度考えてみてほしいです。
それが、あなたと
あなたを好きでいてくれている人の
幸せのためだから。
ということで、今日のお話は以上です。
それでは!